ニコンのフィルムカメラの歴史|各年代の代表機器を紹介

機能性に優れ、プロ・アマ問わず多くのカメラマンから愛されているニコンのフィルムカメラ。耐久性にも長け、その実力は1971年以降NASAのスペースカメラとして採用されているほど。ニコンのフィルムカメラの歴史を辿ることでさらにフィルムカメラの面白さに触れられるのではないでしょうか。

ニコンの歴史

ニコンの歴史は、1917年(大正6年)まで遡ります。もともと、光学機器メーカーとして設立し、超小型双眼鏡をはじめとした軍事用品を製造していましたが、戦争が終わるころになると半導体露光装置やカメラの製造へと移行しました。

ニコンが初めて量産型のカメラ製品を発売したのは1948年。そのレンジファインダーカメラは「ニコンI型」と名付けられました。ちなみに、ニコンI型の最初機は海外のオークションに出品され、約4,700万円もの金額で落札されています。

このニコンI型を皮切りに、その後もさまざまな製品を発売しているニコン。年代の変化と共に、どのようなフィルムカメラを世に送り出していったのでしょうか。各年代の代表的なニコン・フィルムカメラを紹介します。

ニコンのフィルムカメラ【50年~60年代】

50年~60年代の代表的なニコンのフィルムカメラと言えば、1957年発売のレンジファインダー「ニコンSP」、1959年にニコン初となるフィルム一眼レフの「ニコンF」、そしてその普及版として1968年に発売された「ニコマートFTN」ではないでしょうか。

「ニコン SP」は、国内最高のレンジファインダーカメラとして君臨する存在として知られ、画角を切り替えられるユニバーサルファインダーやパララックス自動補正を搭載した贅沢な機器です。

「ニコンF」は、伝説として語り継がれている一眼レフカメラ。レンジファインダーが主流だった当時、ニコンFの登場は衝撃的なものだったと言われています。ここから時代は一気に一眼レフへと移り変わっていきました。ニコンFに使われている「ニコンFマウント」は、今や一般的となったデジタル一眼レフにも受け継がれています。

また、ニコンFは、ニコンの特性でもある頑丈さに加え、当時のカメラでは珍しかった工業デザイナーによるデザインを採り入れています。そのデザイナーとは、1964年に東京オリンピックのロゴを制作した亀倉雄策。まさに時代の先端を行くニコンFは、1966年にグッドデザイン賞の受賞も果たしました。

「ニコマートFTN」は、プロ機としての「ニコン」ブランドではなく、大衆向けに発売した一眼レフカメラ。ニコンFの低価格版でありながら、その機能を超えるTTL式露出計を搭載。良い物を作り続けるニコンならではの製品です。

ニコンのフィルムカメラ【70年~80年・90年代】

70年~80年のニコンフィルムカメラと言えば、ニコンFシリーズでしょう。中でも1971年発売の「ニコンF2」は特筆すべき存在。50年代に発売されたニコンFのさまざまな点を改良した名機として知られています。ニコンF一桁シリーズとしてくくられていますが、このニコンF2は電池不要の最後の機械式として人気の高いモデルです。

83年になるとニコン初のコンパクトカメラである「ニコンL35AF」が登場します。技術の進歩と共に、カメラは一般家庭にまで普及するようになりました。誰でも気軽に写真が撮れる機種ですが、高性能レンズを搭載し描写力にも優れています。

90年代になると、外装にチタンを使った高級コンパクトカメラが発売されます。ある程度の年齢であれば、その重量感のある渋いデザインに懐かしさを感じる方も多いのではないでしょうか。

近年、気軽なスナップ撮影としてコンパクトフィルムカメラが人気のため、中古市場でも比較的高い値段で取引されています。

ニコンのフィルムカメラ【2000年代】

2000年に入ると、2001年に「ニコンFM3A」、2004年に「ニコンF6」が発売されます。ニコンFM3Aはニコンの中で最後となるマニュアルフォーカス一眼です。ニコンとしてはその後もマニュアルフォーカスを作り続けていきたい思いが見えるものでしたが、この辺りから時代はデジタル一眼レフが主流となり、フィルムカメラの生産は影をひそめる形となりました。

皮肉なことに、製造年式が新しいことに加えて生産中止となったニコンFM3Aは、買い手の需要が非常に高く、中古市場では引く手あまたの存在です。

今なお愛されるニコンのフィルムカメラの魅力

歴史深いニコンのフィルムカメラは、その信頼性の高さから、時代を超えて今なお多くのカメラファンを魅了しています。ニコンの技術が詰まった名機たちは、頑丈で壊れにくく、報道の分野やロードレースや野鳥、飛行機撮影といった専門的なカメラマンからも厚い信頼を寄せられるほど。また、「ニコンEM」をはじめとしたコンパクトなフィルム一眼レフは、女性からの人気も高く、初心者でも扱いやすいと評判です。

多くの人から長い年月に亘り愛されてきたニコンのフィルムカメラは、デジタル一眼レフの波を超え、新しいカメラファンも増やす存在となりました。物づくりのプロによって生み出された数々の高性能フィルムカメラは、これからもさまざまなシーンで活躍し続けるでしょう。